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前回の続き。
(4)谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱」角川スニーカー文庫 10巻11冊 継続中 主人公の高校生・キョンは、入学早々「この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」と自己紹介する奇妙な同級生、涼宮ハルヒと出会う。実は彼女は、世界を変えてしまうほどの能力を持つ特異な存在、そして彼女の周りには実際に宇宙人、未来人、超能力者が集まり始める。しかし彼女は自身の能力も含め、その状況に全く無自覚で...というSFラブコメ。 ラノベに興味の無い方でも、タイトルくらいは聞いたことがあるかも、というほど有名なラノベ。京都アニメーションによりアニメ化もされ、そちらも大ヒットした。影響も多大であり、以降のラノベ、アニメには登場人物に似たキャラクターが続々と再生産された。もはや古典であり、消費されつくして陳腐化した面もある。 私は昔、大学の機関誌の「最近読んだ本」という学生投稿コーナーで「最近読んだ面白い本は「涼宮ハルヒ」シリーズです」と書いているのを見て、いくら何でも大学生が堂々とラノベを読んだというのは無いだろう、と憤慨した記憶がある(今でもそう思う)。が、実際に読んだら確かに面白い。涼宮ハルヒの持つ不思議な力の謎と、主人公がそれに振り回されつつ過去と未来を行ったり来たりする、というタイムトラベルのスリリング、そしてハルヒと主人公の淡い恋模様、という3軸がうまく組み合わさっており、さらにキョンとハルヒがいろんな騒動に巻き込まれながら成長していく、という王道ストーリーが満足感を与えてくれる。 SFマニアの意見は聞いたことがないが、文章の軽さと裏腹に、相当綿密に構成されたストーリーである。例えばタイムトラベルの範囲はストーリーの中で絡み合っているが、これが数巻を経てもまったく矛盾を生じず、また必然的である。現在10巻(11冊)まで出ているが、特に4巻「涼宮ハルヒの消失」までは圧巻である。その後もおもしろさの浮き沈みはあるが、破綻は無い。「化物語」と違って、たぶん作者は結末まで考えていると思う。未完なのだ(と思う)が、続きは出るのだろうか。ラノベは毎月大量に新刊が出るが、小さな本屋でも未だに場所を確保しているのを見ると、さもありなん、と思う。 (5)賀東 招二「フルメタルパニック!」富士見書房 12巻完結 世界のどの国にも属さない軍事組織・ミスリルの傭兵、相良宗介は、東京都内の高校に転入(潜入)し、学生である千鳥かなめを秘密裏に護衛することを命じられる。千鳥かなめは、本人も気づいていないが、特殊な能力を持つ人間「ウィスパード」の一人であり、彼女のあずかり知らぬところで、テロリスト達の拉致計画が進んでいるのだった....。 主人公は生まれながらの筋金入りの兵士であり、平和な日本の高校で彼が引き起こす、様々な滑稽な騒動と、護衛対象であるかなめとの淡い恋模様が前半6巻までの読みどころである。敵対組織による事件は起こるが、2人の絆を強めるスパイスであり、読者もそれを了解しながら楽しく読むことができる。 一方、後半になると、状況はのっぴきならないものになり、ミスリルと敵対組織、ウィスパードの謎と個人的な因縁が絡んだ泥沼のバトルになる。宗介、かなめと、宗介の上司テレサ・テスタロッサ(2人と同年齢の女性)の3角関係を軸に、前半に説明された登場人物それぞれの事情と葛藤がむき出しになり、シリアスな人間ドラマが描かれる。一時は完結が危ぶまれ、私を含む愛読者をやきもきさせたが、2010年にすっきりと完結した。かなり風呂敷を広げた小説だが、これぞエンターテインメント!という文句なしの結末であり、読後感も爽快で、まとめて読める人が大変うらやましい。その他、外伝と短編集が11冊出ている。 最初の巻が出たのが1998年で、文体も挿絵も少し古さを感じさせるが、その分今時のラノベの垢にまみれていないのが良いのだと思う。アニメ化も3期に渡って行われ、いずれの出来も良いが、前半までなのが惜しい。やはり今時こういうメカニックな戦争モノってあまり視聴率が取れないのかな。 (6)河野裕「サクラダリセット」 角川スニーカー文庫 7巻完結 超能力者が多く住み、また特別視されていない町、咲良田。町の中では「能力」と呼ばれるその力は町の外には伏せられており「能力」を持つ者は市の管理局に登録され厳重に管理されている。そんな町に住む主人公の男子高校生、浅井ケイと、ヒロインの春埼美空(はるき みそら)、そして2人の友人で中学時代に死んでしまったもう一人のヒロイン、相麻菫(そうま すみれ)の物語。 超能力+ラノベだとバトル系の内容になることがが多いが、本作はそうではない。まず、「能力」がとてもささやかなものであるというのがミソである。「触れる物を5分間だけ消せる」とか「時間と空間を越えて、他人にメッセージを伝える」とか「猫と意識を共有できる」とか。浅井ケイは「過去を忘れない能力」、そして春埼美空は「時間を3日間元に戻す能力(自分も戻るので自覚できない)」を持っている。そのうちに、彼らは咲良田が持つ能力の問題に巻き込まれる。そして自分と友人達の能力を組み合わせて対処していく。2巻までは主に能力が引き起こす小さな事件を通じて、世界観の説明と主要登場人物の紹介に当てられる。3巻からはいよいよ本題に入り、相麻菫の死の謎と、管理局を含んだ、能力がからむ企てが明らかになっていく。ただ、良くある「巨大陰謀物」ではなく....そうですね。あとは読んで下さい。 単純なセカイ系青春恋愛物ではなく、一貫して背景にあるのは「正しさとはなにか」という問いかけである。当然、絶対的な正しさなど無いわけだが、登場人物は全員、自分の正しさを真摯に追求し、そのぶつかり合いがこの小説の見どころである。 比較的最近の出版(2009〜11年)だが、ラノベ的な要素はほとんど見られない。文体も特殊で、非常に淡々とした、透明感のある文章だ。近いのは村上春樹で、文体はもちろん、登場人物の会話の内容や、全体的に漂う寓話的な非現実感など、作者はかなり影響を受けていると思う。もちろん「多崎つくる」を読んだら、やっぱり違うねー、となるのだが、一方で、これがラノベっていうなら、伊坂幸太郎とか、最近の宮部みゆきとかもラノベじゃん、と思ってしまうのだ。 ストーリーは恐ろしく緻密で、作者は7巻の最後まできちんと組み立ててから書き始めたはずだ。コアとなるのは春埼美空の時間を戻す能力で、結果的に、ほとんど同じだが微妙に異なる時間を何度も過ごすことになる。クラクラしそうだが、文章が上手いので、中年の弱った脳でもスムーズに読み進められる。特に最終巻は状況が緊迫し、また伏線が次々と回収されていくため、一気に読んでしまう。少し汚れがなさすぎて気恥ずかしいところもあるけれど。 以上6シリーズ、おすすめを挙げてみた。古いのが多いが、これは偶然ではなく、最近のものほど果てしなく軽く、予定調和になっていき、読み応えのあるものが少ない。どこかに「最近のラノベは、ラノベしか読んだことがない人が書いたようだ」と書いてあって(実際はどうか知らないが)、深く同意した。 次回は、「次点」位のラノベを紹介する。
by mactki
| 2013-12-07 23:22
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