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少し前に、カール・ツァイスの双眼鏡を手に入れた....などとホームページで書くと、「なんですか!かの銘機Classicですか!それとも最新のFLですか!やっぱりアレですねツァイスはコーティングがちがいますからね!ね!」などと血ばしった目で迫ってくる方がいるかもしれないが、いや、いないと思うが、ともかくそんな立派なものではない。新品のツァイスを買おうと思えばまず10万円を覚悟するだろうが、私はネットオークションで1万円で買った。戦前の、従ってコーティングなどされていない、かなり使い込まれたものを買ったのだ。しかも倍率は3倍、口径は13.5mm。名前はTeleater。 3倍の双眼鏡なんて、意味があるのかと思われるかもしれない。私もこれを持ってバードウォッチングに行こうとは思わない。しかし、この双眼鏡ならではの利点があるのだ。まず、見渡せる範囲が広い。だいたい13度くらいはある。例えば、広角双眼鏡として知られるニコンの8×30EIIでも8.8度だから、その広さがわかる。もう一つは最短でピントの合う距離が約60cmと、とても短いことだ。 この双眼鏡は、物の本によると舞台などを見るために作られたそうで、そうなるとそのスペックに納得がいく。私は、仕事の都合でPowerPointを使った発表会などによく行くけれど、後ろの方の席からスクリーンを見るのに重宝している。スクリーン全体を無理なく、しかもはっきり見ることができるのだ。 なぜこんな古い双眼鏡をわざわざ中古で買うのかというと、まず、同じようなスペックの双眼鏡が無いからだ。3倍の双眼鏡は、なにしろスペック上の訴求力がない...というか、顧客側に見る目が無いから、例えば日本製のものは過去、全く作られていない。外国製でも、ツァイスは今でも3.6倍のものを出しているが、かなり割り切った作りになっているし、他のメーカーはたぶん作っていないだろう。似たスペックで構造が簡単なオペラグラスならばあるが、それはプリズム双眼鏡に比べ、うんと安くつくれるからだ。 そして、この双眼鏡は、光学機器が貴重なハイテク機器だった頃のプライドをその身に充満させている。デザインといい、材質といい、仕上げといい、もうほれぼれするような重厚さだ。Carl Zeiss Jenaという会社のロゴは銀象眼で書かれている。そして手のひらに収まる小ささにもかかわらず、その構造は、例えば30mmや50mmの大きな双眼鏡とほとんど同じで、そのまま簡略化されずにスケールダウンされているのである。さすがに接眼ではなく対物を動かすようになっているが、ちゃんとセンターフォーカスで、まるで「普通の」双眼鏡のミニチュアのようだ。材料費は別にして、組み立てコストは上位機種とそれほど変わらなかったのではないだろうか。 私が手に入れたときは対物側にガタがあり、プリズムは少々曇っていて見え味に水をさしていた。逆に言うと、そのような状態だったからこそ1万円で手に入ったと思う。各所のネジを締め直して、しばらくそのまま使っていたが、最近意を決して分解清掃に挑んだ。接眼筒のはずし方がわからなかったが、ネット上のマニア向けの掲示板で相談すると、親切に教えてくださった方がいて、無事分解できた。 カバーを取ると、その裏には、本体の製造番号がケガキでメモされていた。80年前のマイスターが書いたのだろうか。そして中のぞき込むと、小さな小さなプリズムが入っていた。カバーと本体の間の充填物の様子から、これまで分解された様子はなかった。とすると、80年ぶりに日の目を見た(光は通していたけど)プリズムだ。感激もひとしおだ。 予想外だったのは、光軸調整などのために、プリズムの位置を調節するメカニズムがなにもなかったことだ。てっきり、外側からイモネジなどで調整するようになっていると思ったが、そのようなものはなく、また実際清掃後プリズムを組み込んでも、ポジションに遊びはなく、組み上げても光軸ずれはおこらなかった。 素人清掃だから、隅々まできれいになったわけではないが、清掃前とは比べものにならないクリアーさだ。自分で清掃したのだから、もう大満足だ。 像質は....中心部の解像度、シャープネスは全く問題ない。ケルナー(かな?)らしいすっきりした像だ。中心40%より外は崩れる。が、ピントを合わせ直すとかなり持ち直すので、中心と周辺で順にピントを合わせると、実質的な良像範囲はもう少し広がる。さすがに小口径だし、コーティングもないしで少々暗い。が、対象の認識に影響はない。日中だとまったく気にならないと思う。トータルとして充分実用的な性能を持っている。少なくとも「80年前の双眼鏡だから」という言い訳は、頭の中に浮かばなかった。 実は、清掃前には、Teleaterの後継機種、Theatisが欲しいと思っていた。TheatisはTeleaterとはちがう形のプリズムを持った3.5倍の双眼鏡で、光学系の改良やコーティングの追加などでその見えは格段に良くなっているという。少し変わった形状をしていることや、1980年頃まで作られていて美品が多いことから人気が高く、中古市場でもまず2万円は下らないだろう。これが欲しかったが(今でも欲しいが)今回Teleaterの清掃がうまくいって、ま、これでいいやと思うようになった。双眼鏡ウイルスの除去(抑制?)に成功したのだ。今度は中心軸のグリスアップに挑戦したいと思っている。1万円で、ここまで楽しめるものも珍しい。 [2013.6.24]7年ぶりに分解してみました。→
by mactki
| 2006-04-17 22:39
| 双眼鏡
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